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※このシリーズは、原子力発電について正しい認識を持って、今後、この発電方法の 取扱方針についてどのように判断するか、そのための論点整理を目的としています。 そのため、先に結論ありきとしての表記方法はとりません。 では、第一回目として、そもそも日本が原子力発電を導入した理由(長所)を調べて みました。ある程度ご存知とは思いますが、再度、確認をしてみてください。 参考数値としては、内閣府発表の統計数値などを参考に記載を試みました。 Ⅰ.原子力発電の長所 (1)日本のエネルギー資源の海外依存状況 電気などのエネルギーは、家庭活動・企業活動・防衛活動など、あらゆる分野で 使用されている。 つまり、国家戦略として、エネルギーを自国で出来るだけ多く製造できることが、 国家運営の安定の基礎となる。 日本はエネルギーを安定的に供給できる体制にあるだろうか。 実は、日本はエネルギー資源(エネルギーを生み出すための石炭、石油、天然 ガス、原子力などの資源)そのものが非常に少ない。 現状では、海外から約82% (原子力を除くと約96%)を輸入に頼っている。 つまり、供給構造は非常に脆弱なのだ。 参考:エネルギー輸入依存度(原子力を含む) イタリア 85% 日本 82% ドイツ 60% フランス 49% アメリカ 25% イギリス 20% (2)エネルギー資源の採掘可能年数 このエネルギー資源は、あと何年、採掘可能なのだろうか。実は、エネルギー 資源も採掘できる年数には限りがある。 参考:エネルギー資源の採掘可能年数 (BP Statistical Review of World Energy 2010 参照) 石炭 124年 (確認埋蔵量を現在の消費量で按分) 石油 47年 同上 天然ガス 64年 同上 原子力 100年(ワンススルー) ⇒ 核燃料を一度きり使用 130年(プルサーマル) ⇒ 使用済核燃料を再利用 3000年(高速増殖炉サイクル) ⇒ 発電しながら原子燃料生成 上記の参考値を見て頂くとお判りの通り、石炭にしろ、石油にしろ、天然ガスに しろ、現段階で確認できている埋蔵量は、150年にも満たない。 そこで、原子力に頼り、発電しながらさらに原子燃料を生成する高速増殖炉の 開発の研究を進めていったのである。 (3)エネルギー資源の地域分布 上記でみたエネルギー資源は、埋蔵している地域に分布があり、政治的に 安定した地域から安定的に供給を受けたいものである。 参考:地域分布 (BP Statistical Review of World Energy 2010 参照) (Production and Demand:OECD・NEA・IAEA 参照) 石炭 (北米 29.8%、アジア 22.4%、ロシア 19.0%) 石油 (中東 59.9%、アフリカ10.0%、中南米 9.8%) 天然ガス(中東 41.0%、ロシア 23.4%、アフリカ 7.9%) ウラン (豪州 26.6%、北米 16.1%、アフリカ15.1%) ウランや石炭は、政治の比較的安定した地域から算出されている。 中東などでは戦争等が頻発し、その結果、石油価格に影響を与えている。 (4)発電コストにおける燃料費割合 また、エネルギー資源の価格は変動するが、この影響が小さい発電方式ほど 発電コストに変動が小さく、安定してエネルギーの供給が行える。 参考:各発電方式ごとの燃料費の割合 (総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等小委員会 平成16年) 原子力 1割程度 石炭 4割程度 石油 6割程度 天然ガス 6割程度 (5)世界の電力発電量 発電電力量は目を見張る進捗を見せている。 ますますエネルギー資源が必要とされ、その獲得競争は激化する。 ※この点からも上記(4)の燃料比率の割合が低いことは重要である。 参考:世界の発電電力量の推移(世界合計) (財)日本エネルギー経済研究所:アジア・世界エネルギーアウトルック2010 1990年 11,000TWh 2008年 20,000 2020年 27,000 予想 2030年 35,000 予想 つまり、発電コストの変動幅が小さいことは貴重なことである。 (6)地球温暖化対策 地球温暖化防止に向けて、CO2排出比率の小さい発電施設は有効。 参考:各種電源別CO2排出量 (1KWh当たりのライフサイクルCO2排出量、 電事連 原子力・エネルギー図面集2011) 石炭火力 943g 石油火力 738g LNG火力 599g コンバインドLNG 474g 太陽光 38g 風力 25g 原子力 20g 以上、大まかに(1)から(6)の項目を確認してみた。 このような数字を眺めつつ、何故、日本が原子力発電を始めようと当初 考えたのか、数字上の理屈のみは整理できたでしょうか。 原子力発電所は、商業用に1966年から運転が開始しました。私が1歳の時です。 もう開始から45年ほど経ちました。 原子力発電の安全性や、電源のベストミックス、世界の発電施設状況など、 今後、順次、各項目を確認して行く予定です。 皆様ご自身の意見確立に役立ててください。 (次回に続く)
by 3ku-seki
| 2011-07-08 12:38
| エネルギー
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